TOEIC点数が低い管理職を降格できる?

当社では、 外国人社員比率が世界全体で半数を超え、 日本国内でも10%を超えたのを機に、 社内公用語を英語とし、 管理職の登用基準にTOEICの点数を設定しました。 1人でも母国語が日本語でない社員が参加するのであれば英語での会議を義務づけ、 また、 会社費用による各種英会話教育を行っています。 そのような中で、 制度変更前に管理職になった者の英語力不足が大きな問題になっています。 そこで、 例えば「向こう2年以内」 などの期限を設定し、 それまでに基準点に至らなかった場合には管理職から降職させ、 賃金を下げることは可能でしょうか。

 

体調不良による早退の取扱い

部下の体調を心配した管理職が、本人を思いやって就業時間中に無理やり帰宅させました。
当社は半休の制度がなく、その日の全てを休んだわけではないので、年休にすることもできません。
部下本人は、“気持ちはありがたいが、上司が言うので、働けると思ったがやむなく帰宅した“という部分があるようです。
当社の就業規則では、早退(控除)するほかなさそうですが、この場合、本人が希望すれば、年次有給休暇として扱っても問題はないでしょうか。

就業規則によるリスクヘッジ

近年、「モンスター社員」といった表現を、しばしば目にするようになりました。

いわゆる自己中心的な、取り扱いに苦労する問題社員を総称して、「モンスター社員」というようですが、このような社員は、決して珍しいものではなく、実際に多くの事業場から「モンスター社員」の取扱いについてご相談を頂いています。

人材の流動化が進み、中には、転職を重ねる度にわざと会社の揚げ足を取って、金銭的な要求を行うといった確信犯的な人も見られます。
例を挙げれば、上司の指示に正当な理由なく従わない、就業時間に携帯電話、携帯メールなどで、しばしば私的なムダ話をしている、他の社員との協調性を著しく欠き、自己中心的な言動に終始する、ときには声を荒立て、自己の主張のみに終始する、このようなモンスター社員に対し、対応を誤れば、相手の思う壺にはまってしまいます。

従業員側には、「職務に専念する義務」や「忠実に労務を提供する義務」など基本的な義務があるにもかかわらず、それを棚に上げて、会社側の対応に問題があったと主張してくるケースが後を絶ちません。

以前、「言ってはいけない事」と題し、予告なく解雇をすれば労基法に違反する旨のコラムを書きましたが、これは、代表的な対応ミスといえるでしょう。

問題社員に対して、「有効な手立ては何か?」といえば、「就業規則」における規定ということになります。
中には、「就業規則は従業員のためにある、従業員の権利を保障するためのものだ。」というように思われている向きもあるようですが、これは大きな間違いです。

確かに、就業規則には、労働者の権利について規定する部分もありますが、就業規則とは、労働契約の内容を逐一明らかにする書面であり、労使における権利・義務を明確にするといった基本的な役割があります。

当然、従業員に対して課せられる義務や禁止事項などを明確にし、義務違反者に対する制裁(懲戒)や、使用者側からの労働契約の終了(解雇)などについても、しっかり明記しておけば、問題の発生時に、その根拠を示し、然るべき対応が可能となるのです。
会社は、就業規則に根拠を置き、それに基づき、都度、然るべき制裁を与え、なお改善の見込がない場合には、解雇するといった手順を踏むことが肝心です。

「解雇は難しい。」といった誤解もありますが、解雇に関しては、労基法に定める要件を満たすことのほか、客観的、合理的な理由が必要となります。

したがって、就業規則中に、しっかりとした規定(理由)を置き、それを従業員に周知すること、さらに何か非違行為が行われた場合には、その事実に対応する規定を基に、然るべく制裁を行うことが、手順として求められます。

問題社員を放置すること、あるいは問題社員に揚げ足を取られ、金銭等を支払うことは、会社にいる善良な社員のモチベーションを低下させ、場合によっては、モンスター社員が蔓延る(はびこる)ことにもなりかねません。何より、善良な社員の流出は、会社にとって大きな痛手になります。

このようなことにならないよう、自社の就業規則において、従業員の遵守事項、禁止事項、それらに違反した場合についての制裁の程度、手続などをしっかりと規定し、隙を作らないことが、企業防衛の大きな一歩になるといえるでしょう。

労働時間と残業代削減に向けた取組み

先日、あるクライアントから、「キチンと時間管理を行い、時間外労働時間に応じた残業代は支払わなければならないということは良く分かりました。でも、何とかして残業代を削減したいと思うのですが、具体的にはどのような方法で進めて行けばいいのでしょうか?」とのご相談を頂きました。
3回目に書いた「退職した社員から残業代の請求が」の中にあった3つの段階について、もう少し細かく教えて欲しいとのことでした。
早速、会社にお伺いしてインタビューを行いました。
その中であぶり出された問題点は次のようなことでした。

  1. 残業代を含めた賃金設計をしているが、基本的な賃金と時間外労働相当の賃金との区分が不明確であること。
  2. 恒常的に長時間労働が見られ、中には付き合い残業とも思える実態があること。
  3. 遅くまでいることが「是」というような風潮が社内にあること。
  4. 一部の社員から、残業代の不支給について問題提起をされていること。
  5. 就業規則、賃金規程が古く、現状との乖離が大きいこと。
  6. 業務の繁閑がある程度ハッキリしているにもかかわらず、労働時間に関し、変形労働時間制を採用するなどの工夫が見られないこと。

このような問題点を指摘し、改善に向けての取組みを行っていくご意思を確認させていただいたところ、代表者からすぐにでも手を打ちたいとのお返事を頂き、着手することとしました。
代表者は2代目で、正式には来期から社長に就任されることになっています。
彼は、これまで長時間労働を是とする社風にも問題意識を持っており、これでは若い良い人材を確保し、定着させる上でも問題があると考えていたようです。
今後は、他の経営陣の意識改革(これも重要なことです。)を皮切りに、従業員に対するヒアリングやこれまでの運用や実態の確認などを行い、まずは変形労働時間制の導入、それに合わせた各種規定の整備を行った上で、賃金体系の再構築を行っていくことになります。
賃金体系の再構築にあたっては月例給だけでなく、賞与、退職金、評価制度なども含めた人事制度の抜本的な見直しが必要となります。
一部には不利益変更となる要素が出てくることも予想され、従業員のコンセンサスも得ながら進めていかないと、せっかくの制度改定が、却ってモチベーションの低下を招くことにもなりかねません。
制度改定においては従業員の意向も酌みながら進めていくことが、その成否を握る大きなポイントとなりますが、幸いにして今回の代表者は、十分にその点を認識して下さっているようですので、きっと課題解決のお役に立てるものと考えております。

労働基準監督署の臨検

労働基準監督官が事業場へ立ち入り、労働基準法、労働安全衛生法等に基づく法令違反を調査することを臨検といいます。
臨検には、

  1. 定期的な臨検
  2. 労働者からの申告
  3. 労働災害の発生による調査

などがありますが、近年では労働者からの申告により臨検調査が行われるケースが増加してきています。
臨検にあたっては、殆どの場合、あらかじめ日時の指定がなされてきますが、度重なる違反が認められ、再三の勧告にもかかわらず改善されない事業場などには、予告なしで臨検が行われる場合もあります。
臨検は、法令違反の是正を目的として行なわれます。
労働基準監督官が労働諸法令に違反する事実を認めた場合には、通常「是正勧告書」による勧告を行い、使用者に違反事実の是正を求めます。
是正勧告書には、根拠条文、違反事実の内容、是正期日などが記載されますが、決められた期日までに是正を行い、是正したことが認められる書類を添付した上で、「是正報告書」により報告しなければなりません。
臨検時に提出を求められる主な書類は次の通りです。

  1. 労働者名簿
  2. 出勤簿もしくはタイムカード
  3. 賃金台帳
  4. 就業規則、賃金規程(常時10人以上の労働者を使用する事業場)
  5. 労働条件通知書
  6. 定期健康診断結果
  7. 時間外・休日労働に関する労使協定書など

これらの書類は、すべて法で調整を求められている書類であり、これらの書類そのものがないという事業場では、即、整備することが求められます。

次に臨検時において指摘されやすい事項を並べてみます。

  1. 時間外労働の協定未締結、未届
  2. 時間外労働に対する割増賃金(残業代)の不払
  3. 雇い入れ時の労働条件の明示の不履行
  4. 就業規則や各種規程の未整備や変更した場合の未届
  5. 定期健康診断の未実施
  6. 労働者名簿、出勤簿(タイムカード)、賃金台帳等の未整備や保存義務不履行など

臨検時に指摘された事項について是正を行い、期日までに報告することは先述のとおりですが、これを行わない場合や虚偽の事実を記載するなどの悪質な対応がなされた場合には、再調査や行政刑罰、逮捕、送検など、より大きな問題に発展する可能性があります。
また、賃金(残業代を含む。)の時効は2年間と定められています。
したがって、残業代の未払いなどが指摘された場合、最大2年間に遡って支払を命じられる場合もあり、経営に大きな影響を及ぼすことも考えられます。
日頃からしっかりとした管理を行っていれば、大きな問題になることはありませんが、臨検が行われた場合には、誠意を持って対応することが肝心です。
また、残念ながら指摘された事項があった場合には、その指摘事項は正に自社の問題であるということを認識し、しっかりと真摯に是正することが求められます。
是正を求められた事項によっては、労働時間や賃金制度など、企業の人事労務管理制度そのものを大幅に見直さなくてはならないケースも出てきます。
このような場合、付け焼刃的な対応で済ませてしまうと、後に大きな代償を支払うことにもなりかねず、自社の人事労務管理制度を抜本的に見直し、きちんとした対応をすることが求められます。
労働基準監督署から臨検の通知が来た場合には、慌てることなく、できるだけ早めに社会保険労務士に相談されるなどして、自社の労務管理における問題点をあぶりだすとともに、法令遵守を基本として、しっかりとした制度の再構築を行なうようにして下さい。
労働基準監督署の監督官も、真摯に是正に向けた取組みを行っていると認めれば、色々なアドバイスも含めて、自社の相談に乗ってくれるはずです。
「違反事項の取り締まり」と考えるのではなく、「改善に向けた指導」と考え、臨検に臨めば、自社のより良い制度構築の切掛けともなると考えます。

労働時間の管理と残業代

労働時間の管理と残業代について少し考察してみましょう。
残業代とは、法律上、「時間外の割増賃金」と定義され「通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内で政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。」とされています。(労基法37条)

現在、
(1)1カ月の合計が60時間までの時間外労働および深夜労働については通常の労働時間の賃金の2割5分以上、(2)1カ月の合計が60時間を超えた時間外労働が行われた場合には60時間を超える労働について通常の労働時間の賃金5割以上、(3)休日労働に対しては通常の労働日の賃金の3割5分以上の割増賃金の支払が必要です。
仮に、1日8時間、1ヶ月の平均労働日が22日の社員が月給400,000円で働いている場合、割増率を2割5分で計算すると、1時間あたりの時間外単価は2,840円90銭となり、月間40時間の時間外労働をさせた場合の残業代は113,636円にもなります。
ファーストフード店の店長による時間外・休日労働の請求が一部認容された日本マクドナルド社の事件(平成20.1.28 東京地判)については、記憶に新しいところと思いますが、これを契機としていわゆる「名ばかり管理職」の問題がクローズアップされ、多方面でその対策に乗り出しているところであります。

厚生労働省も、これまでの管理監督者の判断基準に加え、「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」という通達を発出し、一定の判断要素を示しています。
もっとも、この通達によっても管理監督者と一般労働者とが明確に線引きされたとはいえず、これを経営側が自身の都合の良いように拡大解釈することは危険であるといわざるを得ません。
小売業、飲食業、流通業だけでなく、他の業種であっても、管理監督者の取扱いの是非について、ご相談を受けることが増えていますが、根本的な問題として、タイトルの如く労働時間の管理と残業代の両面から考えていく必要があります。
長時間労働を改善するには、自ずと組織、人員、仕事の中身を検証しなければならず、これは一朝一夕でできるものではありません。

また、現在の賃金制度のまま残業代を支払っていくとなれば、場合によっては、企業の人件費割合が高騰し、経営そのものを圧迫することも考えられます。
付け焼刃的なその場しのぎの対応は、リスクの先送りに過ぎず、抜本的な解決には繋がりません。
コンプライアンス経営、リスクマネジメントといった言葉までをも「名ばかり」にするのではなく、会社の抱えるリスクに対して問題意識をしっかりと持ち、改善に向けて真剣に取り組むことで、結果として組織が活性化されるとともに業務の効率化が図られ、ひいては優秀な人材の確保、定着に繋がるものと考えます。

退職社員からの残業代請求

前回の解雇予告手当に続いて、今回は在職中に残業代が支払われなかったとして、退職後に残業代を請求されるケースです。
このケースの特徴としては、既に退職している元従業員ですから、会社に対して遠慮なく請求をしてくること、また、情報過多の時代、それなりに理論武装をしてから臨んでくること、場合によっては労働基準監督署などに相談の上で確信を持って対峙してくることなどが挙げられます。
実際このようなトラブルは非常に多く、換言すれば、どの会社でも起こりうる問題であるといえましょう。
「我が社は残業代を見込んで給与を設定しているから大丈夫」という企業もありますが、法律上これでは通らず、判例においても「基本賃金と時間外労働に対する割増手当とを明確に区分していなければならない。」とされています。
では、どうすればこのようなトラブルを防ぐことができるのでしょうか?
一つは、自社の就業規則、給与規程において、所定労働時間、時間外労働、時間外労働に対する割増賃金の支払等について、しっかりと規定し、それに則った残業代の支払を行うことです。
もう一つは、時間外労働時間を含めた労働時間の管理をしっかりと行い、それに基づいて実態どおり残業代を支払うことです。
「それができれば苦労しない、青天井で残業代を支払っていてはとても会社が持たない。」という声も聞きます。
しかし、法に則った形で工夫をすることで、一定の削減を図ることができるのです。
私がご相談を受け、実際に改善したケースでは、大きく分けて次の3つの段階を踏んで移行していきました。
①変形労働時間制の活用
②給与体系の見直し
③総労働時間の圧縮
書いてしまえばわずか3つの取組みですが、この実行プロセスにおいては、経営者、従業員ともに相当な理解を求めながら、進めていかなくてはなりませんでした。
厚生労働省では、近年「不払残業の撲滅」について、指導・監督を強化しており、これは退職者に関する問題だけではなく、在職者についても関係してきます。
賃金についての時効は労基法で2年と定められており、場合によっては退職者、在職者を問わず、過去2年分の時間外割増手当の遡及払いを命じられることもあります。
ちなみに平成19年度に労働基準監督署の是正指導を受けて100万円以上の不払残業代を支払った企業数は1,728社で、集計開始の01年度以降最多となり、支払額も過去最多の272億4,261万円、対象労働者数は17万9,543人で前年度と比べ3,018人減っているものの、1社当たりの平均支払額は1,577万円で、労働者1人当たりの平均額は15万円となっています。
長時間労働がもたらす弊害は割増賃金の問題だけでなく、過労死や過労自殺、心身障害などの要因ともなっています。
残業代対策だけでなく、長時間労働そのものを経営上のリスクとして捉え、早急にリスクヘッジを行うことが大切だと考えます。

経営者が言ってはいけないこと

「明日からもう来なくていいよ。」
経営者であれば、一度や二度はこのセリフを口に出したいときがあるのではないかと思います。
個人の権利意識が多様化し、残念ながら自己主張のみに終始する社員が増えていることも事実であり、非常にもどかしい思いをされている方も多いと思います。
労基法では、労働者を解雇しようとする場合においては、「少なくとも30日前にその予告をしなければならず、30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。」(同法20条)と定めています。
しかし、この予告を怠ったことによるトラブルが後を絶ちません。

冒頭に記した「明日からもう来なくていいよ。」の一言が、後に非常に大きな問題となってくるわけです。
いまや巷ではインターネットをはじめとする情報の氾濫で、非常に手軽に多くの情報が手に入ります。
ネットの検索エンジンで「解雇」と入力すると、実に2,600万件以上がヒットします。
つまり、解雇された従業員が、解雇が附に落ちないということでインターネットを検索すれば、手間をかけることもなく、膨大な情報を手に入れることができるわけです。
これまで、解雇の予告や予告手当の支払義務を知らなかった従業員が、ネットにある情報を見て、「解雇予告手当を支払え」と申し出てくることや、労働基準監督署に相談に行き、労働基準監督署から指導や勧告を受ける場合も少なくありません。
解雇には手順が必要で、それを省けば、無用なトラブルを招くということを肝に銘じておく必要があります。
また、解雇については、平成20年3月1日に施行された労働契約法において、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」(同法16条)と規定しています。
少なくとも就業規則において、従業員が遵守すべき事項(従業員の禁止行為)、解雇の事由、解雇の手続、懲戒の事由や手続などをしっかりと定めておく必要があります。
従業員の行った非違行為については、その都度、注意を行うとともに事後キチンと改善するよう促し、その記録を残しておくことも必要となるでしょう。
労基法20条但書では、「労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合」については、解雇の予告あるいは予告手当の支払を除外できる旨、規定していますが、この場合には所轄労働基準監督署長宛に「解雇予告除外認定申請書」を提出し、認定を受ける必要があります。
この認定事由は、解雇予告制度により労働者を保護するに値しないほどの重大又は悪質な業務違反ないし背信行為が労働者に存する場合であって、企業内における懲戒解雇事由とは必ずしも一致するものではないとされていますので、注意しておく必要があります。
いずれにしても、問題のある社員については、日頃から改善に向けた指導や注意喚起を行い、記録を残すなどしておくこと、どうしても解雇せざるを得ない場合には、事前に専門家に相談された上で対処することなどが望まれます。

経営資源の中の「ヒト」を考える

昔から経営資源といえば、「ヒト、モノ、カネ」といわれ、最近ではこれに「情報」、「時間」、「ワザ」、「知恵」(知的財産)などを含めて経営資源とするケースもあるようです。
これらは全て、経営を行なう上で欠くことのできない資源であるということに異論を挟まれる方はないでしょう。
私は日頃からクライアントの方々に、「経営資源の中で唯一感情を持つものが「ヒト」なのです。」と申し上げています。

国語辞典によれば、感情とは「物事に感じて起こる気持ち。外界の刺激の感覚や観念によって引き起こされる、ある対象に対する態度や価値づけ。快・不快、好き・嫌い、恐怖、怒りなど」とされています。
社会や組織の中で生きて行く上では、快や好きのようないわゆる好感情だけではなく、ときに不快や嫌いといった悪感情を持たれることもあります。
これまで多くの労働相談を受けてきましたが、「感情のもつれ」が切っ掛けとなっているケースが多いと感じています。
お互いにうまく回っているうちは何でもないことであっても、ひとたび感情がもつれると全て悪になってしまう。
まして、感情に対して感情で応酬すれば、文字通り「泥仕合」の様相を呈してくるわけです。
お互いに「気持ちよく働いてもらいたい」、「気持ちよく働きたい」と思っていたはずが、些細なことから「泥試合」になってしまっては元も子もありません。
会社にしっかりとしたルールがあり、そのルールに沿って運用していれば、少なくとも「泥試合」にはならなかったであろうと思われるケースも少なくないのです。

会社のルールとは「就業規則」(賃金規定や旅費規程など、関連する規程の全てを含めて就業規則といいます。)です。
経営者の皆さんは、会社組織を運営して行く上で、就業規則の重要性を十分に理解されているでしょうか?
これまでには、就業規則を従業員のためにあるものと誤解されている方や、「就業規則は作っておらず、ルールはその都度決めています。」といった方、せっかくある就業規則を「従業員には見せていません」という方もいらっしゃいました。
就業規則には、従業員が守るべき事項や、それらに違反した場合の制裁についても記載しなくてはなりません。
私は、何か問題が生じたときに感情でなく、誠実に、しっかりとした根拠を示した上で相手に応えることこそ「泥仕合」を回避する手段であると考えます。

私は、就業規則は経営者の身を守るためにこそあると常々思っております。
人事労務に関するトラブルは感情的なしこりや金銭的な損失だけでなく、解決するまでの人的、時間的な面も含めた損失ばかりがかさみ、一銭の利益も生みません。
人事労務管理におけるリスクマネジメントの第一は就業規則の整備であると考えます。
無用なトラブルを回避し、余計な損失を生まないために、ぜひ一度、自社の就業規則の点検を行うことをお勧めします。