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「明日からもう来なくていいよ。」
経営者であれば、一度や二度はこのセリフを口に出したいときがあるのではないかと思います。
個人の権利意識が多様化し、残念ながら自己主張のみに終始する社員が増えていることも事実であり、非常にもどかしい思いをされている方も多いと思います。
労基法では、労働者を解雇しようとする場合においては、「少なくとも30日前にその予告をしなければならず、30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。」(同法20条)と定めています。
しかし、この予告を怠ったことによるトラブルが後を絶ちません。

冒頭に記した「明日からもう来なくていいよ。」の一言が、後に非常に大きな問題となってくるわけです。
いまや巷ではインターネットをはじめとする情報の氾濫で、非常に手軽に多くの情報が手に入ります。
ネットの検索エンジンで「解雇」と入力すると、実に2,600万件以上がヒットします。
つまり、解雇された従業員が、解雇が附に落ちないということでインターネットを検索すれば、手間をかけることもなく、膨大な情報を手に入れることができるわけです。
これまで、解雇の予告や予告手当の支払義務を知らなかった従業員が、ネットにある情報を見て、「解雇予告手当を支払え」と申し出てくることや、労働基準監督署に相談に行き、労働基準監督署から指導や勧告を受ける場合も少なくありません。
解雇には手順が必要で、それを省けば、無用なトラブルを招くということを肝に銘じておく必要があります。
また、解雇については、平成20年3月1日に施行された労働契約法において、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」(同法16条)と規定しています。
少なくとも就業規則において、従業員が遵守すべき事項(従業員の禁止行為)、解雇の事由、解雇の手続、懲戒の事由や手続などをしっかりと定めておく必要があります。
従業員の行った非違行為については、その都度、注意を行うとともに事後キチンと改善するよう促し、その記録を残しておくことも必要となるでしょう。
労基法20条但書では、「労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合」については、解雇の予告あるいは予告手当の支払を除外できる旨、規定していますが、この場合には所轄労働基準監督署長宛に「解雇予告除外認定申請書」を提出し、認定を受ける必要があります。
この認定事由は、解雇予告制度により労働者を保護するに値しないほどの重大又は悪質な業務違反ないし背信行為が労働者に存する場合であって、企業内における懲戒解雇事由とは必ずしも一致するものではないとされていますので、注意しておく必要があります。
いずれにしても、問題のある社員については、日頃から改善に向けた指導や注意喚起を行い、記録を残すなどしておくこと、どうしても解雇せざるを得ない場合には、事前に専門家に相談された上で対処することなどが望まれます。

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