経営資源の中の「ヒト」を考える

昔から経営資源といえば、「ヒト、モノ、カネ」といわれ、最近ではこれに「情報」、「時間」、「ワザ」、「知恵」(知的財産)などを含めて経営資源とするケースもあるようです。
これらは全て、経営を行なう上で欠くことのできない資源であるということに異論を挟まれる方はないでしょう。
私は日頃からクライアントの方々に、「経営資源の中で唯一感情を持つものが「ヒト」なのです。」と申し上げています。

国語辞典によれば、感情とは「物事に感じて起こる気持ち。外界の刺激の感覚や観念によって引き起こされる、ある対象に対する態度や価値づけ。快・不快、好き・嫌い、恐怖、怒りなど」とされています。
社会や組織の中で生きて行く上では、快や好きのようないわゆる好感情だけではなく、ときに不快や嫌いといった悪感情を持たれることもあります。
これまで多くの労働相談を受けてきましたが、「感情のもつれ」が切っ掛けとなっているケースが多いと感じています。
お互いにうまく回っているうちは何でもないことであっても、ひとたび感情がもつれると全て悪になってしまう。
まして、感情に対して感情で応酬すれば、文字通り「泥仕合」の様相を呈してくるわけです。
お互いに「気持ちよく働いてもらいたい」、「気持ちよく働きたい」と思っていたはずが、些細なことから「泥試合」になってしまっては元も子もありません。
会社にしっかりとしたルールがあり、そのルールに沿って運用していれば、少なくとも「泥試合」にはならなかったであろうと思われるケースも少なくないのです。

会社のルールとは「就業規則」(賃金規定や旅費規程など、関連する規程の全てを含めて就業規則といいます。)です。
経営者の皆さんは、会社組織を運営して行く上で、就業規則の重要性を十分に理解されているでしょうか?
これまでには、就業規則を従業員のためにあるものと誤解されている方や、「就業規則は作っておらず、ルールはその都度決めています。」といった方、せっかくある就業規則を「従業員には見せていません」という方もいらっしゃいました。
就業規則には、従業員が守るべき事項や、それらに違反した場合の制裁についても記載しなくてはなりません。
私は、何か問題が生じたときに感情でなく、誠実に、しっかりとした根拠を示した上で相手に応えることこそ「泥仕合」を回避する手段であると考えます。

私は、就業規則は経営者の身を守るためにこそあると常々思っております。
人事労務に関するトラブルは感情的なしこりや金銭的な損失だけでなく、解決するまでの人的、時間的な面も含めた損失ばかりがかさみ、一銭の利益も生みません。
人事労務管理におけるリスクマネジメントの第一は就業規則の整備であると考えます。
無用なトラブルを回避し、余計な損失を生まないために、ぜひ一度、自社の就業規則の点検を行うことをお勧めします。